2026年1月22日

「打つだけで痩せる最強の薬」「糖尿病治療の革命」
そんな呼び声高い「持続性GIP/GLP-1受容体作動薬」。なぜ今私が持続性GIP/GLP-1受容体作動薬に注目し、よく処方しているのか、具体的にどのような薬で、なぜ痩せるのか? これまでの薬とは何が違うのか?
この記事では、医学的なメカニズムから、痛くない使い方などを解説します。
1. 持続性GIP/GLP-1受容体作動薬とは?
持続性GIP/GLP-1受容体作動薬(一般名:チルゼパチド)とは、GIPとGLP-1という2つのインクレチンホルモンに作用し、強力な血糖降下作用と体重減少効果をもたらす世界初の持続性GIP/GLP-1受容体作動薬です。
- 従来の薬(持続性GLP-1受容体作動薬): シングルエンジン(GLP-1のみ)
- 持続性GIP/GLP-1受容体作動薬: ツインエンジン(GIP + GLP-1)
この「ダブルの効果」により、従来の薬よりも強力な血糖値改善と、高い体重減少効果を実現しています。
2. なぜ痩せる?持続性GIP/GLP-1受容体作動薬の「3つのダイエット効果」
持続性GIP/GLP-1受容体作動薬を打つと、体の中で主に3つの変化が起こります。これが体重が減る理由です。
① 脳への指令:「食欲を減らす」
脳の食欲中枢に直接働きかけ、「食べたい」という欲求自体を抑えます。「我慢する」のではなく、自然と「少量で満足できる」状態を作ります。患者さんに「食欲が何割くらい落ちましたか?」と聞くと、「3~5割くらい落ちました」とおっしゃる方が多いです。
② 胃への指令:「ゆっくり消化」
食べた物が胃から腸へ移動するスピードを遅くします。これにより、食後の満腹感が長時間持続し(腹持ちが良くなる)、間食や食べ過ぎを防ぎます。「いつもの半分くらい食べたところで満足するようになりました」や、「間食がいらなくなりました!」とおっしゃる方が多いです。
③ 体への指令:「脂肪を燃やす」
ここがGIPのすごいところです。
- インスリン分泌の促進: 食後の血糖値が高い時だけインスリンの分泌を促し、速やかに血糖値を下げて血管を守ります。
- 脂肪代謝の促進: GIPには「グルカゴン(脂肪分解などに関わるホルモン)」の分泌を調整する作用もあり、エネルギー代謝を高めて脂肪を燃焼しやすくする効果が期待されています。

3. 「持続性GIP/GLP-1受容体作動薬の使い方・打ち方」
持続性GIP/GLP-1受容体作動薬は、週に1回、自分で注射(皮下注射)をするお薬です。
「注射」と聞くと怖いかもしれませんが、専用のペン型注入器(アテオス)は、針が見えない構造になっており、ボタンを押すだけで一瞬で終わります。
基本ルール
- 頻度: 週に1回(同じ曜日に打つのが理想)
- タイミング: 食前・食後・朝晩いつでもOK
- 場所: お腹、太もも、二の腕(皮下脂肪のある場所)
- 操作: 針の取り付けや空打ちは不要(全自動です)。
知って得する「痛くない」裏ワザ
持続性GIP/GLP-1受容体作動薬は冷蔵庫で保管しますが、当院では痛みを減らすために、打つ前に「室温に戻しておく」ようにアドバイスしています。
冷たい液体のままだと注入時に「しみる痛み」を感じやすいですが、常温に戻してから打つと痛みをほとんど感じなくなります。
もし打ち忘れたら?(72時間ルール)
打ち忘れたことに気づいた時、「次の予定日までどれくらい時間があるか」で判断します。
- 次の予定まで「3日(72時間)以上」ある場合:
気づいた時点ですぐに1回分を打ってください。その後は、元の曜日に戻して継続します。 - 次の予定まで「3日(72時間)未満」しかない場合:
その回はスキップ(打たない)して、次の予定日に1回分を打ってください。
※絶対に2回分を一度に打たないでください。低血糖で倒れたり、激しい吐き気で食事がとれなくなったりするリスクが高まります。


5. 副作用
注意すべき副作用
打ってから2〜3日の間は薬の血中濃度がピークになるため、以下の副作用が出やすい傾向があります。吐き気止めや漢方薬などで体が慣れるまでの期間(初期や増量時)を乗り切れば、徐々に症状が気にならなくなることが多いです。
- 胃腸症状(最も多い): 吐き気、嘔吐、下痢、便秘。使い始めに出やすく、体が慣れると落ち着くことが多いです。
- 低血糖: ふらつき、冷や汗など。持続性GIP/GLP-1受容体作動薬単独では起きにくいですが、過度な絶食や激しい運動時は注意が必要です。
- その他: 稀ですが、急性膵炎などの副作用も報告されています。
まとめ:持続性GIP/GLP-1受容体作動薬を活かすために
持続性GIP/GLP-1受容体作動薬は科学的に裏付けられた非常に強力な効果を持つ薬です。「意思が弱くて痩せられない」と悩み、これまでダイエットに挫折してきた方にとっては、まさに救世主になり得ます。
しかし、薬の力だけに頼ると、脂肪だけでなく大切な筋肉まで落ちてしまったり、隠れ栄養失調になったりするリスクもあります。
- 「健康的に痩せる」を医学的にサポート
食欲が落ちても、体に必要な栄養素をしっかりと摂っていくことが大切になります。当院では血液検査データを用いて、体が「栄養不足」にならないよう、食事や栄養の面からもサポートしていきます。 - 専門医による安全管理
持続性GIP/GLP-1受容体作動薬は本来、糖尿病の治療薬です。副作用や体調変化を見逃さず、安全に継続できるよう専門医が管理します。
「薬 × 医学的管理 × 栄養管理」
この3つが揃って初めて持続性GIP/GLP-1受容体作動薬は真の効果を発揮します。
メリットとリスクを正しく理解し、信頼できる医療機関で相談して使用しましょう。
神戸市で持続性GIP/GLP-1受容体作動薬による治療をご検討の方は、
肥満外来へご相談ください
持続性GIP/GLP-1受容体作動薬のよくある質問
Q1. 注射による「吐き気」が心配です。仕事に支障は出ませんか?
A. 多くの場合は数週間で慣れますが、当院では患者様の生活スタイルに合わせて調整していきます。
持続性GIP/GLP-1受容体作動薬は消化管の動きをを緩やかにするため、使い始めに胃のむかつきや吐き気を感じる方がいらっしゃいます。
当院では、まずは一番少ない用量(2.5mg)から慎重にスタートし、患者さんと相談の上、最初から吐き気止めや漢方を処方することもあります。また、「腹八分目」を心がけ、脂っこい食事を控えることで吐き気が起こりにくくなります。
それでも症状が続く場合は、量を調整したり、漢方薬や吐き気止めを強化して様子を見ながら継続できるようサポートしていきます。
Q2. 薬をやめたらリバウンドしますか?
A. 薬はあくまで「補助」です。治療中に「太りにくい生活習慣」を身につけることが重要です。
持続性GIP/GLP-1受容体作動薬を使えば体重は落ちやすいですが、生活習慣が変わらなければ、当然リバウンドのリスクがあります。
重要なのは、持続性GIP/GLP-1受容体作動薬で食欲が落ち着いている間に、食事内容を見直すことです。当院は「心臓と血管を守る」ことを第一に考えていますので、単に痩せるだけでなく、リバウンドしにくい、血管に負担をかけない健康的な体づくりを目指します。血液検査などのデータに基づき体の栄養バランスを整え、筋肉を維持しながら効率的な脂肪燃焼を狙っていきます。
Q3. 美容クリニックの「メディカルダイエット」とは何が違いますか?
A. 「見た目の変化」だけでなく、医学的な管理下で「内臓機能の改善」を目指す点が異なります。
当院は糖尿病・循環器の専門クリニックです。持続性GIP/GLP-1受容体作動薬は本来、血糖値を管理するための強力な薬剤です。
そのため、単に体重を減らすことだけを目的とせず、血糖値・血圧・脂質代謝などが改善しているか、副作用で膵臓などに負担がかかっていないか、偏った食事で栄養バランスを崩していないか、を定期的な血液検査でしっかりモニタリングしながら処方します。
「健康診断で数値を指摘された」「将来の心臓病リスクを減らしたい」という方は、ぜひ当院にご相談ください。
Q4. 注射は痛くないですか?
A. 針は髪の毛ほどの細さです。「思ったより痛くない」と驚かれる方がほとんどです。
持続性GIP/GLP-1受容体作動薬の針は非常に細く短いため、採血のような痛みはありません。
少しでも痛みを減らすコツとして、「打つ前に冷蔵庫から出して室温に戻しておく(冷たいと痛みを感じやすいため)」ことや、アルコール消毒が完全に乾いてから打つことをアドバイスしています。初めての方には、診察室でデバイスの使い方を丁寧に説明しますのでご安心ください。