
糖尿病の診断、検査
糖尿病の診断、検査
糖尿病の診断基準は以下になります。
1度の検査で(1)~(3)のうちの1つと(4)が同時に確認された場合、もしくは(1)~(3)が2回確認された場合に糖尿病と診断されます。
空腹時血糖値は食事の影響を受けない正確な血糖値を測定するために使用されます。測定の際には、前回の食事から約10時間以上経過した状態で血液を採取します。このため、通常は朝食前に行われることが多いです。
[特定健診での基準値]
空腹時血糖値:100~125㎎/dL:
→特定保健指導(生活改善が必要)。
空腹時血糖値:126㎎/dL以上:
→糖尿病が疑われ、医療機関の受診が推奨されます。
健康診断では空腹時血糖値を主に測定するため、糖尿病の初期段階で見られる食後高血糖(血糖値スパイク)が見逃されることがあります。
より正確な診断や糖尿病の早期発見には、ブドウ糖負荷試験(OGTT)を行うことが必要です。
随時血糖値は、食事のタイミングに関係なく測定される血糖値です。
特定の条件に縛られずに測定できるため、食後や日中の任意のタイミングで血糖値を確認したい場合に用いられます。
詳しくはこちらへ(ヘモグロビンA1cとは?)
[基準値]11~16%
アルブミンは血液中のタンパク質で、作られてから壊れるまでの間(約20日)に、血液中の糖にさらされて、糖が結合するという性質があります。アルブミンのうち糖がくっついたものの割合をグリコアルブミンといい、過去2週間分の平均血糖値を反映します。グリコアルブミンは献血でも計測してもらえます。これにより糖尿病の診断のきっかけとなることもあります。貧血や腎不全の方はHbA1cでは正確な値が出ないため、グリコアルブミンを指標として用います。
[基準値]14μg/mL以上
糖と一緒に尿中に排泄される物質である1.5-AGは、血糖値が高くなると余分な糖とともに尿中に排泄され、その血中濃度は低くなります。この指標は、過去数日〜1週間程度の血糖値の変動(血糖値スパイク)を検出するのに適しています。
空腹時の血糖値が正常でも、HbA1cが高めの場合には、食後に血糖値が高くなる食後高血糖が疑われます。ブドウ糖負荷試験を行うことで、血糖値の変化を詳しく知ることが可能となり、正常、境界型(糖尿病予備軍)、または糖尿病のどれに該当するのかを正確に診断することができます。
[基準値]陰性(-)
尿中に排泄された糖のことです。血液中の糖は、腎臓で血液から濾過される過程で水分とともに体に再吸収されますが、血糖が異常に増加して限界を超えると、糖が尿中に排泄されます。血糖値が160〜180mg/dLで尿中に糖が出てくるといわれています。
ヘモグロビンA1c(HbA1c)は、過去2ヶ月間の平均的な血糖の状態を示す指標で、糖尿病の診断や治療効果の評価に用いられます。血糖値が高い状態が続くと、血液中のブドウ糖が赤血球内のヘモグロビンと結合し、これがヘモグロビンA1cとなります。HbA1cは、糖尿病の合併症予防や血糖コントロールの管理に有効な指標です。
[基準値] 正常範囲:4.6~6.2%(NGSP)
特定健診の基準
HbA1c 5.6 〜6.4%:特定保健指導の対象(生活習慣改善が推奨される範囲)。
HbA1c 6.5%以上:糖尿病が疑われ、医療機関の受診が推奨されています。
当院の方針
HbA1c5.5〜5.9%:糖尿病リスクがあると考えられるため、ブドウ糖負荷試験(OGTT)を推奨しています。
HbA1c6.0〜6.4%:糖尿病リスクが高い状態と考えられ、OGTTを強く推奨しています。
HbA1cは、赤血球中のヘモグロビンに糖が何%結合しているか?を示しています。
HbA1c(%) | 平均血糖値(mg/dL) |
---|---|
5.0 | 97 |
6.0 | 126 |
7.0 | 154 |
8.0 | 183 |
9.0 | 212 |
10.0 | 240 |
HbA1cは平均血糖値と相関します。
状態 | 空腹時血糖値 | 2時間後血糖値 |
---|---|---|
正常 | <110mg/dL | <140mg/dL |
境界型(耐糖能異常) | 110-125mg/dL | 140-199mg/dL |
糖尿病 | ≧126mg/dL | ≧200mg/dL |
空腹時の血糖値が基準値範囲内でも、食後の血糖値が高い場合は、将来、糖尿病にかかるリスクが高いため注意が必要です。また、境界型も糖尿病を発症する可能性が高く、動脈硬化が進みやすいとされていますので、普段の食事や運動に気をつけるとともに、定期的に検査を受けるようにしましょう。
採血で、血液中のインスリン濃度を測定できます。血糖値を同時に見ることで、血糖値とインスリンとのバランスを確認できます。血糖値が高いのにインスリンの量が少ないインスリン分泌能低下や、インスリン量が多いのに血糖値が下がらないインスリン抵抗性などがわかり、糖尿病の状態をより詳細に知ることができます。
膵臓からインスリンが分泌される際に、インスリンに付着して出てくるタンパク質がCペプチドです。Cペプチドの量を測ることで、膵臓から出たインスリンの量を推測することができます。血液中のCペプチド濃度が0.5ng/ml以下時はインスリン分泌が不十分と考えられ、インスリン治療の必要性が高いと判断されます。
インスリン分泌指数(Δインスリン/Δ血糖値)は、血糖値の上昇に対してすい臓がどれだけインスリンを分泌できているかを評価する指標です。空腹時とブドウ糖負荷後のインスリン値と血糖値の変化量を比較して計算します。この指数が0.4以下の場合、インスリン分泌能が低下していることを示し、糖尿病への進展リスクが高いことを示しています。
空腹時の血糖値とインスリン値を用いて計算し、すい臓がどれだけインスリンを分泌できているかを推定します。
空腹時の血糖値とインスリン値を用いて計算し、体がインスリンにどれだけ反応しているか(インスリン抵抗性)を推定します。1.6以下は正常、2.5以上はインスリン抵抗性があると考えられる。
ご自宅でできる簡易の血糖測定です。指先などの皮膚に針を刺し、わずかな血量で血糖値を測定します。インスリン注射薬などで治療を行っている方は、公的医療保険が適用されます。
センサーを装着することによって血糖値をスマホで見ることができます。食事や運動による血糖値の変化を確認できます。
リブレ2を装着し、1週目は普段通りの食事を行い(左の図)、2週目は食べる順番を意識して食事をしたところ、食後の高血糖(血糖値スパイク)がほとんど無くなっています(右の図)。
血糖値を「見える化」することで、自身の血糖値の変化を実感でき、生活習慣改善の継続につながります。
超速効型インスリン(フィアスプ)を1日30単位(朝10単位、昼10単位、夜10単位)使用していたが、インスリンを中止し、週1回注射製剤のGIP/GLP-1受容体作動薬(マンジャロ2.5mg)を開始したところ、食後の高血糖の著明な改善が認められた。
糖尿病の方は、自覚症状がないうちに心筋梗塞や不整脈を発症することがあります。定期的に心電図検査を受けることで、これらの病気を早期に発見し、適切な対策を取っていくことが可能です。
糖尿病の方は心血管病、感染症、がんなどのリスクが高いとされています。これらの疾患は自覚症状がないまま進行することも多いため、胸部レントゲンを撮影することでこれらの疾患を早期に発見できる可能性があります。
糖尿病の方は、自覚症状がないまま心筋梗塞や不整脈、心不全を発症するリスクが高いため、心臓超音波検査が推奨されます。この検査によって、心不全の兆候を早期に発見し、早期から心不全の予防や治療を始めることが可能になります。
糖尿病の方は狭心症や心筋梗塞のリスクが高いため、運動負荷試験が推奨されます。この検査によって、自覚症状がない段階で狭心症を早期に発見し、心筋梗塞の予防につなげることが可能です。
糖尿病の方は肝臓がんや膵臓がんのリスクが高いため、腹部超音波が推奨されます。この検査は、これらのがんを早期に発見できる可能性があるほか、胆嚢、腎臓、膀胱、子宮、前立腺など他の病気の発見にも役立ちます。
糖尿病の方は自覚症状がないまま動脈硬化が進行し、末梢動脈疾患を引き起こすことがあります。ABI検査を受けることで、これらの病気を早期に発見できる可能性があります。末梢動脈疾患は、冠動脈疾患や脳血管障害を高率に合併するため、早期に対策や治療を始めることで予防していきます。
糖尿病では自覚症状がないまま動脈硬化が進行し、脳梗塞を引き起こすことがあります。頸動脈超音波による、動脈硬化の進行度を把握し、、脳梗塞のリスクを予測することが可能です。頸動脈の肥厚やプラーク(コレステロールのたまり)が確認された場合には、リスクを軽減するために早期の治療が大切になります。
IMT肥厚を認めた場合はLDLコレステロール低下療法を強化し、脳梗塞の防止に務めます。
冠動脈疾患のリスクが高いと判断した場合には造影剤を使用した冠動脈CT撮影を行っていきます。
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