
血糖値の急上昇を抑える食事のヒント
血糖値の急上昇を抑える食事のヒント
食後の血糖値の急激な上昇(血糖値スパイク)は、全身の血管に影響し、動脈硬化を引き起こすと考えられています。食事の際に少し工夫を加えるだけで、血糖値の上昇を緩やかにすることができます。
【実験結果から学ぶ】
実際に、食事の順番を変えることで血糖値の上昇にどのような影響があるのかを実験してみました。
実験①:コンビニの親子丼を先に食べた場合
実験②:レタス80gを先に食べた場合
実験の結果、先に少量の野菜(レタス80g)を食べても、血糖値の上昇を抑える効果は得られませんでした。
【血糖値上昇幅の目安】
一般的に、食後の血糖値上昇幅は+30~60程度が正常の範囲とされています。
実験③:キャベツ150gを先に食べた場合
実験④:レタス100g+キャベツ150gを先に食べた場合
これらの実験結果から、先に少量の野菜を摂取するだけでは血糖値の上昇を十分に抑えられないこと、そして、ある程度の量の野菜を最初に摂ることで、食後の血糖値上昇を抑えられる可能性が考えられました。
J Clin Biochem Nutr . 2014 Jan;54(1):7-11より改変
研究①:1日に野菜500gを先に食べることで血糖値のピークが低下
この研究結果は、積極的に野菜を摂取することが、血糖値の安定に繋がる可能性を示しています。
【厚生労働省の推奨】
厚生労働省は、1日あたりの野菜摂取目標量を350g以上と推奨しています。
研究②:サラダ(キャベツ60g+オリーブ油10g+酢10g)を先に食べることで食後の血糖値がしっかりと低下
この研究結果は、少量の野菜でも、オリーブ油とお酢を組み合わせることで、効率的に血糖値の上昇を抑えられる可能性を示唆しています。ドレッシングの選び方も、血糖値コントロールにおいて重要な要素と考えられます。
【解説:オリーブオイルと酢の血糖値抑制効果】
実験③:キャベツ150gを先に食べた場合
実験⑥:ドレッシングをオリーブ油+酢に、10分あけてから食事をした場合
【食事開始から10分空けることの重要性】
食事開始から10分程度時間を空けることで、インクレチンホルモンの分泌が促され、血糖値を下げる準備が整うと考えられます。インクレチンは、食後に小腸から分泌されるホルモンで、インスリンの分泌を促進し、血糖値の上昇を抑制する働きがあります。
実験⑦:コンビニ中華丼の後に野菜200gを食べた場合
実験⑧:ブロッコリー100g(半株)を先に食べた場合
ブロッコリー: 食物繊維が非常に豊富で、食後の糖の吸収を緩やかにする効果が期待できます。調理も簡単なので、毎日の食事に取り入れやすい食材です。
【食事の最初にたんぱく質を摂ることの効果】
研究によると、肉、魚、卵などのたんぱく質を食事の最初に摂ることで、インスリンが早期に分泌されやすくなり、その後の食後の血糖値上昇を抑える効果が期待できます。
【解説:たんぱく質が血糖値を下げるメカニズム】
たんぱく質を摂取することによって、インクレチンの一種であるGLP-1(グルカゴン様ペプチド-1)の分泌が促進されます。GLP-1は、
といった作用を持つため、食後の血糖値の急激な上昇を抑えると考えられています。
実験⑨:天津飯を食べた場合
実験⑩:豚しゃぶサラダを先に食べて、天津飯を食べた場合
これらの実験結果は、丼ものを食べる際にも、最初に野菜やたんぱく質を摂取することで、血糖値の急上昇を抑えられる可能性を示しています。
【食事の速度と順番に関する研究】
食事の速度と食べる順番が、血糖値に与える影響を調べた研究があります。
この研究結果から、ゆっくりと時間をかけて食べること、そして食べる順番を意識することが、血糖値の急上昇を防ぐために重要であることが示唆されます。特に、糖質(ごはん)を食べるまでに時間をかけることがポイントのようです。
【糖質を食べるまでの時間と血糖値の関係】
糖質を摂取するまでに10分以上の時間をかけることで、血糖値を下げるホルモン(インスリンやインクレチンなど)の分泌がよりスムーズに整うのではないかと考えられます。ゆっくりと食べることで、満腹感も得られやすくなり、食べ過ぎを防ぐ効果も期待できます。
【血糖値を抑えるお弁当の食べ方】
このお弁当を食べる際に、
1,まずサラダを食べる
2,次にハンバーグを食べ終える
3,カツを半分食べる
4,最後に、ご飯と残りのカツを食べる
という順番で食べたところ、食後の血糖値の上昇が抑制されたという例があります。
この食べ方では、食物繊維が豊富なサラダを最初に摂り、次にたんぱく質であるハンバーグを食べ進めることで、血糖値の急上昇を抑える準備をしています。炭水化物であるご飯と揚げ物のカツは、食事の後半に食べることで、血糖値の上昇を緩やかにすることが期待できます。
【野菜を先に食べる嬉しい効果:血糖値だけでなく悪玉コレステロールにも】
食事の最初に野菜を食べることは、血糖値の急上昇を抑えるだけでなく、悪玉コレステロール(LDLコレステロール)の腸からの吸収を抑える効果も期待されています。
血糖値スパイクの主役:炭水化物
私たちが普段摂取する栄養素の中で、最も速く、そして大きく血糖値を上昇させるのは炭水化物です。ご飯、パン、麺類、果物、砂糖などに多く含まれる炭水化物は、消化吸収が早く、食後に血糖値が急激に上昇しやすいため、血糖値スパイクの原因となります。
血糖値の上昇が緩やかな栄養素:たんぱく質と脂質
一方、肉、魚、卵、豆などに豊富なたんぱく質や、油などに含まれる脂質は、炭水化物に比べて消化吸収に時間がかかるため、血糖値の上昇は緩やかで、その効果も長く持続するという特徴があります。
この図からもわかるように、食事のバランスを考える上で、炭水化物の摂取量に注意し、たんぱく質や脂質を適度に摂ることが、血糖値の安定につながります。
実験:りんごの形態と血糖値
この実験結果から、液体状の食品は、固体の食品に比べて胃の通過時間が速いため、糖分が吸収されやすく、血糖値が急激に上昇しやすいことがわかります。
【自然な形の食品を選び、よく噛んで食べることが大切】
血糖値の急上昇を抑えるためには、なるべく自然な形の食品を摂取するように心がけましょう。また、よく噛んで食べることも、血糖値の上昇を緩やかにするために非常に重要です。噛むことで唾液の分泌が促され、消化が助けられるだけでなく、食事の速度も自然と遅くなり、糖の吸収も緩やかになると考えられています。さらに、満腹感も得られやすくなります。
実験:白米の食べ方と血糖値
この実験結果は、水分が多く含まれる液体状の食事は、固体の食事に比べて胃の通過時間が速いため、糖分が吸収されやすく、血糖値スパイクを引き起こしやすいことを改めて示しています。
【具体的な症例:お茶漬けと低血糖】
実際、お茶漬けを食べた後に必ず低血糖症状(めまい、ふらつき、冷や汗など)が出現する方がおられました。しかし、お茶漬けをやめて、卵かけご飯を食べるようにしたところ、食後の急激な血糖値上昇とその後の急激な低下が起こりにくくなり、低血糖症状は起こらなくなったということです。
【食事中の水分摂取と血糖値:流し込みはNG】
食事中に水分をどのように摂るかによっても、血糖値の上昇具合が変わることを示す実験結果をご紹介します。
実験:おにぎりの食べ方と血糖値
この実験結果は、固体の食べ物を水分で流し込むように摂取すると、胃の通過時間がさらに速くなり、糖分がより吸収されやすいため、血糖値スパイクを引き起こしやすくなることを示唆しています。
【汁物の賢い摂り方】
味噌汁やスープなどの汁物を摂る場合は、食事の最初にゆっくりと飲むか、具沢山にして食べることをお勧めします。最初に汁物を摂ることで、その後の食事の食べ過ぎを防ぐ効果や、胃腸の働きを緩やかにする効果が期待できます。また、具沢山にすることで、食物繊維や他の栄養素も一緒に摂取でき、血糖値の急激な上昇を抑える助けになります。
実験:食パンとバターの血糖値への影響
この実験結果は、脂質であるバターを糖質である食パンと一緒に摂取することで、血糖値の急上昇を抑えられる可能性を示唆しています。
【考察:脂質が糖の吸収を抑制するメカニズム】
脂質は消化に時間がかかるため、胃から小腸への移動を緩やかにする働きがあります。これにより、糖質の吸収速度も緩やかになり、血糖値の急激な上昇が抑制されると考えられます。
ただし、バターは飽和脂肪酸を多く含むため、摂取量には注意が必要です。
より健康的な脂質の選択肢としては、栄養価の高いアボカドを試してみてはいかがでしょうか。
実験:鍋料理と血糖値
この実験結果は、外食のすき焼きは、自宅で作るよりも砂糖などの糖分が多く使われている可能性を示唆しています。
この実験結果から、お餅と一緒に食べるあんこの種類、特に砂糖の有無や量によって、血糖値の上昇が大きく異なることが明確に示されました。砂糖を多く含む食品は、血糖値を急激に上昇させる可能性が高いと言えます。
実験:なます、たたきごぼう、お寿司と血糖値
【考察:血糖値上昇の要因】
実験:お餅の食べ方と血糖値
この実験結果から、同じお餅でも、一緒に食べるものによって血糖値の上昇具合が大きく異なることがわかります。
【お餅を食べる際の血糖値コントロールのヒント】
納豆おろし餅はサラッとして食べやすく、美味しくいただけますが、水分が多い大根おろしを加えることで、納豆による血糖上昇を抑える効果が若干弱まる可能性があることが示唆されました。
実験:お雑煮の食べ方と睡眠不足による血糖値の変化
この実験結果は、同じ食べ方をしても、前日の睡眠不足によって血糖値の反応が大きく異なることを示唆しています。睡眠と血糖値の間には深い関係があります。
血糖値スパイクとは、食後30〜90分の間に血糖値が140mg/dL以上に急上昇し、その後急激に低下する状態の事を言います。この状態が続くと、心筋梗塞、脳梗塞、がん、認知症などのリスクが上昇するため、早期の対策が望ましいです。しかし、空腹時血糖値は正常であることが多いため、一般的な健康診断では見逃されやすく注意が必要です。そのため、血糖値スパイクを発見するには、ブドウ糖負荷試験(OGTT)が必要であると考えられます。
①ブドウ糖の吸収速度に比べてインスリン分泌が遅くなり、血糖値の急上昇によってインスリンの過剰分泌が起こり、血糖値スパイク後に低血糖が起こりやすい。
②精製された炭水化物は食物繊維が少なく、吸収速度が早いため、血糖値の急上昇が起こりやすい。炭水化物の量にも比例して血糖値が上昇する。
③よく噛まずに、早食いすることでGLP-1などの消化管ホルモンの分泌が不十分な状態で炭水化物が胃を通過し小腸でブドウ糖として吸収されるため血糖値の急上昇をきたしやすい。
④睡眠不足によってインスリンが効きにくくなりブドウ糖が細胞内に取り込まれなくなったり、ストレスホルモンの増加によって血糖値が上昇しやすくなります。
⑤空腹時間が長くなると遊離脂肪酸の増加によってインスリンが効きにくくなり、インスリン分泌が遅くなったり、グルカゴン分泌増加によって血糖値が上昇しやすくなる。
⑥液体を同時に摂取することで、炭水化物の胃通過時間が早くなり、インスリン分泌よりも小腸でのブドウ糖吸収が早くなるため血糖値が上昇しやすくなる。
朝食を抜くと、昼食で血糖値スパイクになります。朝食をとることで昼食の血糖値は上がりにくくなりますが、朝食ですい臓を刺激しておくことで昼食の血糖値は上がりにくくなると考えられます。
朝は代謝が高いため、糖質はエネルギーとして消費されやすいです。
同じカロリーでも夜にたくさん食べると、血糖値の総面積は大きくなります。朝食をしっかりとることで減量しやすいことが報告されています。
22時に食事をした場合、血糖値のピークは就寝時になっています。就寝中の筋肉は脱力しているため、血糖は筋肉に取り込まれずに脂肪に変わりやすくなります。体脂肪の増加によってインスリンが効きにくくなり、血糖値は上がりやすくなります。
15時に昼食の場合、8時間の空腹時間となり、おにぎり1個でも血糖値スパイクを起こしています。空腹時間が長くなると血糖値スパイクを起こしやすくなります。1日3食とることは血糖値スパイクの予防につながります。
夕食が遅くなりそうな場合、先に炭水化物を少量とっておくことで、血糖値スパイクを抑えることができます。
遅めの夕食は腹八分目を意識し、野菜中心のおかずにすることで、入眠時の胃腸への負担を減らし、睡眠の質を保つことで翌日の血糖値も上がりにくくなります。
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