
睡眠時無呼吸症候群
睡眠時無呼吸症候群
十分な睡眠時間をとっても疲れがとれない
3つ以上該当する方は睡眠時無呼吸症候群のリスクがあります。医療機関の受診をお勧めします。
スマホにいびきラボというアプリをダウンロードします。ベッドの横にスマホを置き、いびきラボを起動し就寝します。いびきの録音や解析をしてくれます。
睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)は、寝ている間に息が止まって酸欠状態になり睡眠障害を引き起こす病気です。
代表的な症状は“いびき”で、眠りが浅くなるため、日中に強い眠気や倦怠感を生じることがあります。放置すると、血管・心臓・脳に大きな負担がかかり、高血圧症や狭心症、心筋梗塞、脳卒中などを合併することもあります。できるだけ早く診断し、治療をはじめることが大切です。
息が10秒以上止まり、その後酸欠状態となります。無呼吸とは完全に空気の流れ(気流)が止まった状態です。いびきとは、空気が通る時に鳴る振動音のことです。
☑ 肥満による舌根沈下(脂肪がたまる)
☑ あごが後退している
☑ 加齢による筋力の低下
☑ 扁桃肥大
☑ 鼻閉による口呼吸
☑ 口蓋垂(こうがいすい)・軟口蓋(なんこうがい)による狭窄
太っていなくても、顎が小さく後退していたり、口呼吸の場合は要注意です。飲酒や睡眠薬の服用で筋肉が緩み、睡眠時無呼吸症候群は出現しやすくなります。
睡眠時無呼吸症候群によって十分な睡眠がとれないと、日中に眠気に襲われ、居眠り運転による交通事故を起こしやすくなります。 調査によると、交通事故を起こす確率は、約7倍多いといわれています。
検査は簡易検査と、精密検査があります。簡易検査は重度の睡眠時無呼吸症候群の発見に有効ですが、軽度や中等度の発見には精度の面で精密検査が適しています。
自宅で検査を行います。
簡易検査は手指や鼻下にセンサーを装着し、普段通りに眠ります。
いびき、無呼吸の回数から睡眠時無呼吸症候群の重症度を診断します。
精密検査は頭、鼻、胸、手足にセンサーを装着し、普段通りに眠ります。いびき、無呼吸の回数だけでなく、胸の動き、脳波計からより詳細な睡眠時無呼吸症候群のタイプを診断します。
1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数が5回未満が正常、5〜14回を軽症、15〜29回を中等症、30回以上が重症と判定します。
CPAP治療は、簡易検査で40回以上の場合、精密検査で20回以上の場合に保険適応となります。
正常な方の脳波を見ると、深い睡眠→赤色のレム睡眠の90分の睡眠サイクルを繰り返し、明け方にはレム睡眠が長くなっています。
睡眠時無呼吸症候群の方の脳波を見ると深い睡眠を認めず、レム睡眠もほとんど認めず、睡眠サイクルがはっきりしていません。これは、無呼吸による酸欠状態にょって脳の覚醒を繰り返すためです。
睡眠時無呼吸症候群の方は8年間の死亡率が40%というデータがありますが、なぜ死亡率が高くなるのでしょうか。その理由の一つとして、以下のような心臓や血管への影響が考えられています。
無呼吸による酸素飽和度の低下を赤丸で示していますが、同時に青丸で示したように血圧が上昇しています。
これは、低酸素によって交感神経が緊張することで、血圧の上昇を招いていると考えられます。
無呼吸による酸素飽和度の低下を赤丸で示していますが、同時に青丸で示したように心拍数が上昇しています。
これは、低酸素によって交感神経が緊張することで、心拍数の上昇を招いていると考えられます。このように低酸素状態によって血圧や脈拍の上昇が引き起こされています。
睡眠時無呼吸症候群の方は心房細動という不整脈に約2倍なりやすいと言われています。私の経験でも心房細動で受診される患者さんは睡眠時無呼吸症候群を合併されていることが多く、両者には密接な関係があると考えられます。
心房細動では、心房が細かくふるえるため、血栓ができやすい状態になっています。もし、血栓が脳の血管を詰まらせてしまうと脳梗塞を発症することになります。
重症の無呼吸症候群の方は脳卒中に3倍以上なりやすいという報告があります。低酸素による血圧、脈拍、不整脈への影響が一つの要因として考えられます。
他の報告でも、重症の睡眠時無呼吸症候群の方は心筋梗塞や脳卒中などの心血管疾患に約3倍なりやすいことが示されています。
睡眠時無呼吸症候群の方は、いわゆる突然死が増加すると報告されています。夜間に繰り返される低酸素によって、交感神経が緊張することが一つの要因ではないかと考えられます。
気道がつまった状態で息を吸うと、胸の中の圧力が陰圧になります。この陰圧によって心臓に多量の血液が引き込まれてきます。その結果、右心に負担がかかることで夜間頻尿をきたしたり、左心を圧迫することで循環不全を引き起こすことが考えられます。
①高血圧患者の30%に睡眠時無呼吸症候群を認めます。CPAP治療によって血圧が下がることはよく経験されます。
②難治性高血圧の80%に睡眠時無呼吸症候群を認めます。CPAP治療によって降圧剤がよく効くようになることはよく経験されます。
③心不全患者の76%に睡眠時無呼吸症候群を認めます。CPAP療によって心不全が改善します。
④心房細動患者の50%に睡眠時無呼吸症候群を認めます。CPAP治療によって心房細動の予防に寄与します。カテーテルアブレーション後の再発率も低下します。
⑤狭心症患者の31%に睡眠時無呼吸症候群を認めます。CPAP治療によって狭心症発作が起こりにくくなります。冠拡張薬の効きもよくなります。
⑥心筋梗塞患者の57%に睡眠時無呼吸症候群を認めます。CPAP治療によって心筋梗塞の再発率の減少が期待できます。
⑦大動脈解離の37%に睡眠時無呼吸症候群を認めます。CPAP治療によって大動脈解離による炎症を鎮め、治癒を促進が期待できます。
睡眠時無呼吸症候群の方は糖尿病になりやすいと考えられます。睡眠の質と血糖値との関連が考えられます。
睡眠時無呼吸ががんを合併する機序については、交感神経の亢進や炎症や免疫異常を惹起すること、夜間の繰り返す低酸素血症などが原因として考えられています。
約480万人の睡眠時無呼吸症候群を5年以上追跡調査すると肺がんの合併が約30%増加していました。
睡眠時無呼吸症候群の方は認知症に2倍なりやすいと考えられます。
簡易PSG検査にて1時間の無呼吸・低呼吸回数が40回以上の場合はそのままCPAP治療は可能となりますが、20〜39回の場合はフルPSG検査を行い治療方針を決定します。
無呼吸回数が20回未満の軽症の場合、CPAPが困難な場合が良い適応となります。
マウスピース療法は軽症に適した治療法です。睡眠時にマウスピース(スリープスプリント)を装着し、下あごを前方に出すように固定することで、上気道を広く保ち、無呼吸やいびきの発生を防ぎます。
横向きに寝て(側臥位)、舌の重力による落ち込みを防ぎます(背中や腰にクッションなどをつけて工夫します)。
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睡眠薬や安定剤、飲酒を控えて、筋肉の弛緩による舌の落ち込みを防ぎましょう。
鼻腔通気検査にて、高度な鼻閉を認め、鼻ポリープ、鼻中隔湾曲症、扁桃腺腫大、副鼻腔炎などによる鼻閉が疑われる場合には耳鼻科へ紹介させていただきます。花粉症やアレルギー性鼻炎に対する治療はとても大切です。鼻閉による口呼吸は睡眠時無呼吸症候群を悪化させます。
肥満の場合は減量することで、喉周りの脂肪沈着が減少するため、気道を確保することが期待できます。
たとえ数キロの体重減少でも無呼吸回数が10回以上減少することはよく経験されることです。良質な睡眠のためには、少しでも体重を減らすことが重要になります。
無呼吸回数が20回以上の中等度以上の場合はCPAP (シーパップ) 療法の適応となります。
CPAP療法は中等度から重症の方に有効な治療法です。睡眠中に鼻に装着したマスクから空気を送り込み、気道を開存させて治療します。定期的な通院が必要になります。詳しくはCPAP専門外来
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