
高コレステロール血症、脂質異常症
高コレステロール血症、脂質異常症
性別 | 年齢 | 危険因子 | 分類 |
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男性 | 40〜59歳 | 0個 | 低リスク |
1個 | 中リスク | ||
2個以上 | 高リスク | ||
60〜74歳 | 0個 | 低リスク | |
1個 | 中リスク | ||
2個以上 | 高リスク | ||
女性 | 40〜59歳 | 0個 | 低リスク |
1個 | 低リスク | ||
2個以上 | 中リスク | ||
60〜74歳 | 0個 | 中リスク | |
1個 | 中リスク | ||
2個以上 | 高リスク |
エネルギー量の摂り過ぎが挙げられます。甘いものや酒、油ものなどをよく摂る人に高値の傾向があります。
以下の項目をチェックしてみましょう。
これらに当てはまった方は脂質異常症の可能性が高いと考えられます。少しでも気になる方はお気軽に当院へお越しください。
脂質異常症とは血液中のコレステロールや中性脂肪が増加した状態のことを言います。コレステロールは細胞膜やホルモンの材料となり、中性脂肪はエネルギー源としての役割があります。
脂質異常症では、血液がドロドロの状態となっており、動脈硬化を進行させ、脳梗塞や心筋梗塞を引き起こしてしまう恐れがあります。
コレステロールには LDLコレステロールとHDLコレステロールがあります。LDLコレステロールは、血管の壁にたまりやすく動脈硬化の元になりますが、HDLコレステロールはこれを掃除する働きがあるため、LDLコレステロールは悪玉コレステロール、HDLコレステロールは善玉コレステロールと呼ばれています。
中性脂肪が高いとLDLコレステロール(悪玉)が小さくなり、血管の壁により入り込みやすく、動脈硬化をより進行させるため、この小さいLDLコレステロールのことを超悪玉コレステロールと呼ばれています。
高LDLコレステロール血症、高中性脂肪(トリグリセライド)血症、そして低HDLコレステロール血症が持続すると、超悪玉コレステロールが増加し、血管壁に堆積し、プラークと呼ばれるコブが形成され、動脈硬化を起こしてきます。
プラークは血流を悪化させるだけでなく、破裂すると血栓を作り出す原因となります。この血栓により血流が阻害されると、その部位の組織や臓器が壊死するリスクがあります。これが心臓で起こると心筋梗塞、脳で起こると脳梗塞につながり、深刻な後遺症を患ったり、最悪の場合、命に関わる危険性があります。
項目 | 悪玉コレステロール(LDL) | 超悪玉コレステロール (small dense LDL) |
---|---|---|
サイズ | 大型 | 小型 |
血管への浸透性 | 通常 | 非常に高い |
酸化のリスク | 中程度 | 高い |
動脈硬化促進作用 | 中程度 | 非常に高い |
・LDLコレステロールが血管壁に蓄積してプラーグを形成。
・プラークが破裂すると血栓を作り、血管を閉塞。
・これが心筋梗塞や脳梗塞の直接的な原因になります。
・高LDLコレステロールは血管内皮に慢性的な炎症を引き起こし、動脈硬化を進行させます。
・炎症はプラークの不安定化を招き、破裂リスクを高めます。
・血管壁が劣化することで、動脈瘤や脳出血のリスクが増加します。
・高トリグリセリド(中性脂肪)は、血液や粘性を増し、血流を悪化させる原因となります。
・HDLコレステロール(善玉コレステロール)が低い場合、コレステロールの余剰を回収できず、動脈硬化の進行が早まります。
コレステロールが高いだけでは自覚症状はありませんが、瞼などに黄色腫(黄色いしこり)が現れることがあります。特に遺伝性の家族性高コレステロール血症では角膜輪やアキレス腱肥厚が特徴的です。
成人家族性高コレステロール血症診療ガイドライン2022より
高コレステロールが続くと動脈硬化を引き起こし、血流障害による症状が現れることがあります。例えば、心臓の血流障害では胸痛、足の血流障害では足の痛みが出ることがあります。
種類 | 基準値 |
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高LDLコレステロール血症 | LDL―C≧140mg/dL |
低HDLコレステロール血症 | HDL-C<40mg/dL |
高トリグリセリド血症 | 中性脂肪≧150mg/dL |
基質異常症の治療は、まず食事療法と運動療法をメインとした生活習慣の改善を行い、それでも数値が改善しない場合は必要に応じてお薬を用いた治療を行います。脂質異常症の治療目標は、LDLコレステロール・中性脂肪(トリグリセライド)・HDLコレステロールの数値を目標値まで改善させ、それを維持することによって「動脈硬化を進行させないこと」です。
基本的には、1日3食規則正しくご飯を食べて、間食や夜の食事を減らし、1回の食事の量を腹8分目にすることなどが重要です。LDLコレステロール値や中性脂肪(トリグリセライド)を上げるとされる“飽和脂肪酸”を含む食品を減らし、逆に体内でこれらを調節してくれる役割を持つ“不飽和脂肪酸”を含む食品を増やすことを意識しましょう。
適切な運動の強さは、心拍数が少し上昇し、「息がちょっときつい」と感じる程度の有酸素運動が最適です。週に3回、30分以上の運動を目指しましょう。たとえ忙しい日でも、10分でもいいから運動を行い、その習慣を毎日の生活に取り入れることが重要です。日中に可能な時間を見つけて運動をすることで、適切な運動時間を確保しましょう。朝の散歩や帰宅後のウォーキングなど、日常生活に自然に組み込める運動方法も効果的です。定期的な有酸素運動はsdLDLを減少させ、HDLを増加させます。
上の図はスタチン治療を行った患者さんにおいて、LDLコレステロールが下がれば下がるほど心血管病のリスクが低下したことを示しています。
生活習慣の改善を一生懸命行っても、なかなか期待した通りに血液検査の値が良くならないこともあります。そういった場合には、必要に応じて脂質を下げるお薬を使うことになります。
製品名 |
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特徴 |
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副作用 |
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オススメのポイント | コレステロール低下療法における第一選択薬であり、心血管イベント抑制効果に圧倒的なエビデンスがあります。長期投与による安全性も確認されている。 |
製品名 |
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特徴 |
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副作用 |
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オススメのポイント | コレステロール吸収亢進病態(スタチン使用中、閉経後女性、糖尿病など)には効果的です。 |
製品名 |
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特徴 |
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副作用 |
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オススメのポイント | HDLコレステロール低値の方、糖尿病の方、スタチンとの併用、腎機能低下や高齢者 |
製品名 |
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特徴 |
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副作用 |
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オススメのポイント | 魚の摂取が少ない方、糖尿病の方におすすめ。心血管疾患リスクを低減する効果が期待できる。 |
スタチン治療は、服薬開始後2週間程度で効果が現れ始め、4〜6週間で最大効果が得られます。そのため、治療1〜3ヶ月後に採血を行い、コレステロールの低下効果や副作用(肝機能、筋肉の酵素など)の有無を確認することが一般的です。
スタチン治療は、定期検査で副作用がなければ治療を継続し、LDLコレステロールが目標値を達成するように管理します。コレステロール値は将来の脳梗塞や心筋梗塞を予防するため、生涯にわたって管理する必要があり、スタチン治療も長期間続けることが一般的です。ただし、患者個々のライフステージや健康状態に応じて治療方針を見直し、その都度継続の可否を検討していきます。
スタチン治療の副作用として、0.5~2%に肝機能障害、約1〜5%に筋肉痛などの筋症状が出ることがあります。肝機能障害は多くの場合一過性で、治療を継続しても肝酵素が自然に低下することが多く、通常は大きな問題になりません。重篤な副作用としては横紋筋融解症(発症率0.001%)があります。尿が茶褐色になる場合は早急に受診が必要です。採血で副作用の程度を確認しながら、内服の継続を判断します。
心臓や頸動脈エコー、運動負荷試験などで動脈硬化の進行具合をチェックします。もし、動脈硬化の進行を認めた場合はLDLコレステロールを更に低下させたり、中性脂肪に介入したり、より積極的な脂質低下療法行うことによって動脈硬化の進行を抑え、プラークの退縮ができる場合があります。
はい、下げられます。動物性食品を控え、植物性食品を中心に食事を摂ってください。
ポートフォリオ食事療法(食物ステロール、大豆タンパク質、ナッツ、可溶性食物繊維)を4週間続けることで、LDLコレステロールが平均28%低下Jenkins et al.(2003)
そうすると、食物繊維やオメガ3脂肪酸を摂取できますのでコレステロール値が20〜30%程度低下します。
有酸素運動や筋肉トレーニングを継続することでLDLコレステロールが5〜10%低下することが期待できます。
体重を減らすことで最大15%の低下が期待できます。
食事や運動による生活習慣を改善すると、3ヶ月で効果が見られます。
継続すること、6ヶ月程で更なる改善が期待できます。
方法 | 効果が現れる期間 | 具体的な改善内容 |
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可溶性食物繊維摂取 | 4〜6週間 | LDLコレステロールが5〜10%低下 |
植物ステロール摂取 | 3〜4週間 | LDLコレステロールが10〜15%低下 |
地中海式食事 | 8〜12週間 | LDLコレステロールが8〜10%低下 |
有酸素運動 | 12週間以上 | HDLコレステロールが5〜10%増加 |
高強度インターバルトレーニング | 6〜8週間 | HDLコレステロールが7%増加 |
食事療法+運動療法 | 12週間〜6ヶ月 | LDLが15%低下、HDLが8%増加 |
・植物に含まれる化合物で、腸管でのコレステロール吸収を阻害します。
・Meta-analysis by Demonty et al.(2009)―植物ステロール/スタノールを1日2〜3g摂取することで、LDLコレステロールが平均10〜15%低下。―コレステロール吸収を競合的に阻害する作用が確認されている。
・欧州心臓病学会(ESC)の推奨 ―植物ステロールを含むサプリメントの使用が心血管リスクの低減に有効。
・脂質代謝に関与し、LDLコレステロールの低下とHDLコレステロールの上昇を促進します。
・Carlson et al.(2005)
―高用量のナイアシン(1〜2g/日)の摂取で、LDLコレステロールが10〜20%低下し、HDLコレステロールが20〜30%増加。―副作用として紅潮や胃腸障害があるため、医師の管理下での使用が推奨されています。
・大豆製品に含まれる植物性化合物で、コレステロール代謝を改善します。
・Meta-analysis by Zhan &Ho(2005)
―大豆イソフラボンを含むサプリメントを摂取することで、LDLコレステロールが平均4〜6%低下。
―心血管疾患予防において有益とされています。
・緑茶に含まれる抗酸化物質で、コレステロール吸収を抑える効果が期待されます。
・Meta-analysis by Zheng et al.(2011)
―緑茶抽出物を含むサプリメントでLDLコレステロールが約5〜10%低下。
―食料として摂取する場合よりもサプリメント形式の方が効果が高いとされます。
・サイリウム(オオバコ由来)やオート麦由来の可溶性食物繊維が腸内でコレステロール吸収を阻害します。
・Meta-analysis by Brown et al.(1999)
―1日5〜10gの可溶性食物繊維で、LDLコレステロールが5〜10%低下。
―便通改善とコレステロール低下の二重効果。
・サトウキビや米糠由来の成分で、脂質代謝を改善する効果があるとされています。
・Cuba trials(2002)
―ポリコサノールの摂取でLDLコレステロールが15〜25%低下し、HDLが5〜10%増加。
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